キリンさんが好きです。
常に2位のキリンさん
昔テレビで流れていた松本引っ越しセンターのCMが今でも忘れられません。
「キリンさんが好きです。でもゾウさんの方がもっと好きです。」
と電話越しで答える女の子。
当時ぼくは物心がつくかつかないの時期でしたが、キリンさんが可哀想だと思いました。
最初から「ゾウさんが好きです」って言えば傷つかずに済むのに…
褒められているのに負けた気分になってしまうキリンさんが不憫でならなかったのです。
あれから月日は流れましたが、あの頃の気持ちを忘れたことは一時もありません。
キリンさんはきっと長い間落ち込んでいるでしょう。
ここ10年くらい暗い気持ちでいっぱいのはずです。
しかし人生(キリン生?)はつらいもので、落ち込んでいるときにはさらに悲しい出来事が重なってくるものです。
そんな時、キリンさんはその悲しみを乗り越えられるでしょうか。
なにかの拍子に心と長い首がぽきっと折れてしまわないか不安で仕方ありません。
この話を友人にしたら「ヤノユウが励ましに行ってあげなよ!」と言われました。
ぼくにキリンさんが救えるだろうか…
答えは出ませんでしたがとりあえず軽い気持ちで行ってみることにしました。
雨の日に行くことにした
さっそく動物園に行こうとして気づいたのですが、キリンさんって普段はまあまあ人気者です。
普通に生活している分にはちやほやされてるしぼくが励ます必要はありません。
むしろぼくが励まされたいくらいです。
ただ、雨の日はどうでしょうか。
雨の日の動物園はきっとガラガラでしょうから承認欲求は満たされません。
それにキリンさんは首が長すぎるので、他の動物よりも早く雨に当たってしまいます。
それがまた暗い気持ちを助長しそう。
問題はぼくが雨の日に動物園に行きたくないという一点に着きます。
でも一対一で話せるいい機会かもしれない…普段は周りの人もいるので集中して話せないし、キリンに話しかけている人は一般的に結構危ない人と認識されがちです。
ぼくはキリンに「人生(キリン生)は悪いこともあるし報われないことも多いけど、まあなんかうやむやにしていこう!」というメッセージをはっきりと伝えたい。
そう考えると雨の日はむしろチャンスですので、覚悟を決めました。
雨の降っている動物園
ということで長崎バイオパークに行ってきました。
長崎県は基本的に雨が降っているらしいのです。
ぼくもよく知らなかったのですが、内山田洋とクールファイブという方々が「長崎は今日も雨だった」という曲を大ヒットさせたことからも、その噂は本当であることがわかります。
いつの時代もあるあるネタは強いのです。
そして長崎バイオパークに行った当日、当然のように雨が降っていました。
ただ少し予想外だったのは、雨が本格的な土砂降りだったということ。
園内は見事に誰もいなくて、ただ雨の音が鳴り響いていました。
それでもわざわざ長崎まで来たのですから、キリンさんコーナーまで足を運びます。
傘はほとんど役に立たず、気づいたら全身ずぶ濡れです。
それでもキリンさんを励ましたい!その気持ちだけでなんとかたどり着きました。
キリンさん!!!
やっと会えた!!!
「キリンさん聞いて欲しい!キリン生とはつらいこともあるけど…」
キリンさんは雨宿りのために、すごく遠くにある屋根の下で雨宿りしていました。
ぼくの声は雨の音にかき消され、そして消えました。